「少年の日の思い出」テスト問題 《前半》




◆《後半》はこちら!!

「少年の日の思い出」テスト問題 《後半》

 

【一】本文について、設問に答えよ。

客は夕方の散歩から帰って、私の書斎で私のそばに腰かけていた。昼間の明るさは消えうせようとしていた。窓の外には、色あせた湖が、丘の多い岸に鋭く縁取られて、遠くかなたまで広がっていた。ちょうど、私の末の男の子が、おやすみを言ったところだったので、私たちは子どもや幼い日の思い出について話し合った。
「子どもができてから、自分の幼年時代のいろいろの(ア)シュウカンや楽しみごとがまたよみがえってきたよ。それどころか、一年前から、ぼくはまた、チョウチョ集めをやっているよ。お目にかけようか。」と私は言った。
彼が見せてほしいと言ったので、私は収集の入っている軽い厚紙の箱を取りに行った。最初の箱を開けてみて、初めて、もうすっかり暗くなっているのに気づき、私はランプを取ってマッチを擦った。すると、①たちまち外の景色は闇に沈んでしまい、窓いっぱいに不透明な青い夜色に閉ざされてしまった
私のチョウチョは、明るいランプの光を受けて、箱の中から、きらびやかに光り輝いた。私たちはその上に体をかがめて、美しい形や濃いみごとな色を眺め、チョウの名前を言った。
「これはワモンキシタバで、ラテン名はフルミネア。ここらではごく珍しいやつだ。」と私は言った。
友人は一つのチョウを、ピンの付いたまま、箱の中から用心深く取り出し、羽の(イ)ウラガワを見た。
「②妙なものだ。チョウチョを見るくらい、幼年時代の思い出を強くそそられるものはない。ぼくは小さい少年の頃熱情的な収集家だったものだ。」と彼は言った。
そしてチョウチョをまたもとの場所に刺し、箱の蓋を閉じて、「もう、けっこう。」と言った。
その思い出が不愉快ででもあるかのように、彼は口早にそう言った。その直後、私が箱をしまって戻ってくると、彼は微笑して、巻きたばこを私に求めた。
「悪く思わないでくれたまえ。」と、それから彼は言った。「きみの収集をよく見なかったけれど。ぼくも子どもの時、むろん、収集していたのだが、残念ながら、自分でその思い出を汚してしまった。実際話すのも恥ずかしいことだが、ひとつ聞いてもらおう。」
彼はランプのほやの上でたばこに火をつけ、緑色のかさをランプに載せた。すると、私たちの顔は、快い薄暗がりの中に沈んだ。彼が開いた窓の縁に腰かけると、彼の姿は、外の闇からほとんど見分けがつかなかった。私は葉巻を吸った。外では、カエルが遠くからかん高く、闇一面に鳴いていた。友人はその間に次のように語った。
ぼくは、八つか九つの時、チョウチョ集めを始めた。初めは特別熱心でもなく、ただはやりだったので、やっていたまでだった。ところが、十歳ぐらいになった二度めの夏には、ぼくは全くこの遊戯のとりこになり、ひどく心を打ち込んでしまい、そのため他のことはすっかりすっぽかしてしまったので、みんなは何度も、ぼくに③それをやめさせなければなるまい、と考えたほどだった。チョウを採りに出かけると、学校の時間だろうが、お昼ご飯だろうが、もう塔の時計が鳴るのなんか、耳に入らなかった。休暇になると、パンを一きれ胴乱に入れて、朝早くから夜まで、食事になんか帰らないで、駆け歩くことがたびたびあった。
今でも美しいチョウチョを見ると、おりおりあの熱情が身にしみて感じられる。そういう場合、ぼくはしばしの間、子どもだけが感じることのできる、あのなんともいえぬ、貪るような、うっとりした感じに襲われる。少年の頃、初めてキアゲハに忍び寄った、あの時味わった気持ちだ。また、そういう場合、ぼくはすぐに幼い日の無数の瞬間を思い浮かべるのだ。強くにおう乾いた荒野の焼きつくような昼下がり、庭の中の涼しい朝、神秘的な森の外れの夕方、④ぼくはまるで宝を探す人のように、網を持って待ち伏せていたものだ。そして美しいチョウを見つけると、特別に珍しいのでなくったってかまわない、日なたの花に止まって、色のついた羽を呼吸とともに上げ下げしているのを見つけると、捕らえる喜びに息もつまりそうになり、しだいに忍び寄って、輝いている色の斑点の一つ一つ、透きとおった羽の脈の一つ一つ、触角の細いとび色の毛の一つ一つが見えてくると、その緊張と歓喜ときたら、なかった。そうしたビミョウな喜びと、激しい欲望との入り交じった気持ちは、その後、そうたびたび感じたことはなかった。
ぼくの両親は立派な道具なんかくれなかったから、ぼくは自分の収集を、⑤古い潰れたボール紙の箱にしまっておかねばならなかった。びんの栓から切り抜いた丸いキルクを底に貼り付け、ピンをそれに留めた。こうした箱の潰れた壁の間に、ぼくは自分の宝物をしまっていた。初めのうち、ぼくは自分の収集を喜んでたびたび仲間に見せたが、他の者はガラスの蓋のある木箱や、緑色のガーゼを貼った飼育箱や、その他ぜいたくなものを持っていたので、自分の幼稚な設備を自慢することなんかできなかった。それどころか、重大で、評判になるような発見物や獲物があっても、ないしょにし、自分の妹たちだけに見せるシュウカンになった。
ある時、ぼくは、ぼくらのところでは珍しい青いコムラサキを捕らえた。それを展翅し、乾いた時に、得意のあまり、せめて隣の子どもにだけは見せよう、という気になった。それは、中庭の向こうに住んでいる先生の息子だった。この少年は、⑥非のうちどころがないという悪徳をもっていた。それは子どもとしては二倍も気味悪い性質だった。彼の収集は小さく貧弱だったが、こぎれいなのと、手入れの正確な点で一つの宝石のようなものになっていた。彼はそのうえ、傷んだり壊れたりしたチョウの羽を、にかわで継ぎ合わすという、非常に難しい珍しい技術を心得ていた。とにかく、あらゆる点で、模範少年だった。そのため、ぼくは妬み、(ウ)嘆賞しながら彼を憎んでいた。
この少年にコムラサキを見せた。彼は専門家らしくそれを鑑定し、その珍しいことを認め、二十ペニヒぐらいの現金の値打ちはある、と値踏みした。しかしそれから、彼は難癖をつけ始め、展翅の仕方が悪いとか、右の触角が曲がっているとか、左の触角が伸びているとか言い、そのうえ、足が二本欠けているという、もっともな欠陥を発見した。ぼくはその欠点をたいしたものとは考えなかったが、こっぴどい批評家のため、自分の獲物に対する喜びはかなり傷つけられた。それでぼくは⑦二度と彼に獲物を見せなかった

 

 

問一 傍線部(ア)〜(ウ)のカタカナは漢字に、漢字は読みをひらがなで答えよ。

問二 傍線部①について、この部分からは周囲が暗い雰囲気になっていることが読み取れるが、これとは対比的な表現を本文から五字で抜き出せ。

問三 傍線部②とあるが、どのようなことが妙なのか。「…こと」に続くように本文から過不足なく探して、はじめと終わりの三字を書け。

問四 傍線部③の、指示内容を本文から七字で抜き出せ。

問五 傍線部④とあるが、ここで用いられている表現技法として、最も適切なものは次のうちどれか。
 擬人法   直喩   倒置   反復法

問六 傍線部⑤とは対比的な表現を本文から四十字以内で探してはじめと終わりの五字を書け。

問七 傍線部⑥について、
(1)なぜ「悪徳」なのかを説明したものとして、最も適切なものは次のうちどれか。
 非のうちどころがないと見せかけているが、実際はずる賢い性格の持ち主であるから。
 非のうちどころが見つけられず、自分が馬鹿にされても馬鹿にし返すことができないから。
 非のうちどころがないために、親しみの気持ちをを持つことができないから。
 非のうちどころがなく、気味が悪い性格で、子どもでなく大人だと思ってしまうから。

(2)「非のうちどころがない」と同意の内容を述べている一文を探して、はじめの十字を抜き出せ。

問八 傍線部⑦とあるが、その理由として最も適切なものは次のうちどれか。
 彼にコムラサキを見せると珍しいことは認めたが、難癖をいくつもつけて欠点を発見し、自分の喜びは傷つけられてしまったから。
 足が二本欠けているという欠陥を発見されてしまい、せっかく見つけたコムラサキを非難されていると思うと、悲しくなったから。
 足が二本欠けていることは、たいした欠点だと思っていなかったが、評論家である人物にもっともな欠陥と指摘されてしまったから。
 彼にコムラサキを見せると珍しいと言ったが、いくつもの欠陥があると指摘し、コムラサキの価値を下げていくことが気に入らなかったから。

 

 

 




 

 

 

 

 

 

 

【解答例】
問一(ア)習慣 (イ)裏側 (ウ)たんしょう
問二 きらびやか
問三 チョウ…はない(こと)
問四 チョウチョ集め
問五 
問六 ガラスの蓋…たくなもの
問七(1) (2)とにかく、あらゆる点
問八 

 

 

 

 

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

*

CAPTCHA