「祭主三位輔親の侍」テスト問題




■(注意!)字数指定のある問題について、句読点、鍵括弧、記号など全てを字数に含む。

 

【一】本文について、設問に答えよ。

七条の南、室町の東一町は、祭主三位輔親が家なり。①丹後の天橋立をまねびて、池の中島をはるかにさし出だして、小松を長く②植ゑなどしたりけり。寝殿の南の廂をば、月の光入れんとて、鎖さざりけり。
春の初め、軒近き梅が枝に、鶯の、定まりてX巳の時ばかり来て鳴きけるを、④ありがたく思ひて、それを愛するほかのことなかりけり。時の歌よみどもに、「⑤かかることこそはべれ。」と告げめぐらして、「明日のY辰の時ばかりに渡りて、聞かせたまへ。」と触れ回して、伊勢武者の宿直してありけるに、「かかることのあるぞ。人々渡りて、聞かんずるに、あなかしこ、鶯打ちなんどして、やるな。」と言ひければ、この男、「⑥なじかはつかはし候はん。」と言ふ。輔親、「とく夜の明けよかし。」と待ち明かして、いつしか起きて、寝殿の南面を取りしつらひて、営みゐたり。
辰の時ばかりに、時の歌よみども集まり来て、今や鶯鳴くと、うめきすめきし合ひたるに、先々は巳の時ばかり必ず鳴くが、Z午の時の下がりまで見えねば、いかならんと思ひて、この男を呼びて、「いかに、鶯のまだ見えぬは。今朝はいまだ来ざりつるか。」と問へば、「鶯のやつは、先々よりもとく参りてはべりつるを、帰りげに候ひつる間、召しとどめて。」と言ふ。「召しとどむとは、いかん。」と問へば、「取りて参らん。」とて立ちぬ。
心も得ぬことかなと思ふほどに、木の枝に鶯を結ひつけて持て来たれり。おほかたあさましとも言ふばかりなし。「こは、いかにかくはしたるぞ。」と問へば、「昨日の仰せに、鶯やるなと候ひしかば、言ふかひなく逃がし候ひなば、弓矢取る身に心憂くて、⑧神頭をはげて、射落としてはべり。」と申しければ、輔親も居集まれる人々も、あさましと思ひて、この男の顔を見れば、脇かいとりて、息まへ、ひざまづきたり。祭主、「とく立ちね。」と言ひけり。人々をかしかりけれども、この男のけしきに恐れて、⑨え笑はず。一人立ち、二人立ちて、みな帰りにけり。興さむるなどは、こともおろかなり。

 

問一 次の語句の読みをひらがな(現代仮名遣い)で書け。
①廂 ②鶯 ③宿直

問二 傍線部①は、現在のどの都道府県か漢字で答えよ。

問三 傍線部②「植ゑ」を例にならって文法的に説明せよ。
(例)みな帰りにけり。 《正解》ラ行四段活用の動詞「帰る」の連用形

問四 傍線部③とあるが、旧暦では具体的に何月から何月の間か。

問五 傍線部X〜Zは、それぞれ何時ごろを指すか。

問六 傍線部④の現代語訳として最も適切なものは次のうちどれか。
ア ありがたいと思って
イ 恥ずかしいと思って
ウ めずらしいと思って
エ すばらしいと思って

問七 傍線部⑤の内容を本文から二十八字で探して、はじめと終わりの三字を書け。

問八 傍線部⑥の現代語訳として最も適切なものは次のうちどれか。
ア どうして行かせましょうか。いや、行かせません。
イ どうして使うことがありましょうか。いや、使いません。
ウ どうして御前に参上することがありましょうか。
エ どうして国元へとお帰りになってしまうのでしょうか。

問九 傍線部⑦について、
(1)誰の心中か。本文から人物名を抜き出せ。
(2)これはどのような心理から出た言葉か。
ア 疑心  イ 恐怖  ウ 苦心  エ 期待

問十 傍線部⑧とあるが、この行為に及んでしまった原因を、本文から十八字で抜き出せ。

問十一 傍線部⑧とあるが、それはなぜか。
ア 鶯を見ることができなかったから。
イ 男の顔つきに恐れを抱いたから。
ウ 男が落ち込んでしまったから。
エ 鶯の死骸を見てしまったから。

問十二 本文の内容に合致するものは次のうちどれか。
ア 輔親は歌詠みに、決まった時間に現れる鶯を見に来てくれと願ったが、歌詠みが来た直後に鶯は死んでしまい、その場にいた人々はがっかりしてしまった。
イ 歌詠みは輔親に、明日の朝に鶯を見にくるからと言ったが、翌朝来た時に歌詠みは鶯を見る気になれず、用意した輔親は呆れてしまった。
ウ 伊勢武者は輔親に、鶯が決まった時間に梅の枝にきていることを報告したが、輔親はそれは前からであると答え、伊勢武者は鶯を射てしまった。
エ 輔親は伊勢武者に、梅の枝にくる鶯を決して追いやるなと言ったが、伊勢武者は鶯を行かせるなと勘違いをしてしまい、弓矢で射落としてしまった。

問十三 本文の出典を漢字で答えよ。

 




 

 

 

 

 

 

 

【解答例】
問一 ①ひさし ②うぐいす ③とのい
問二 京都府
問三 ワ行下二段活用の動詞「植う」の連用形
問四 一月〜三月
問五 X 午前十時ごろ Y 午前八時ごろ Z 正午
問六 ウ
問七 軒近き…きける
問八 ア
問九(1)祭主三位輔親(輔親) (2)ア
問十 あなかしこ、鶯打ちなんどして、やるな
問十一 イ
問十二 エ
問十三 十訓抄

 

 

 

 

 

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