「なげきつつひとり寝る夜」「うつろひたる菊」テスト問題

【一】本文について、設問に答えよ。
九月ばかりになりて、出でにたるほどに、箱のあるを手まさぐりに開けて見れば、人のもとにやらむとしける文あり。あさましさに、見てけりと②だに知られむと思ひて、書きつく。
うたがはしほかに渡せるふみ見ればここやとだえにならむとすらむ
など思ふほどに、むべなう、十月④つごもりがたに、三夜しきりて見えぬ時あり。つれなうて、「しばしこころみるほどに。」など、気色あり。
これより、夕さりつかた、「内の方ふたがりけり。」とて出づるに、心得で、人をつけて見すれば、「町の小路なるそこそこになむ、とまり給ひぬる。」とて来たり。さればよと、⑤いみじう心憂しと思へども、いはむやうも知らであるほどに、二、三日ばかりありて、暁がたに門をたたく時あり。さなめりと思ふに、憂くて、開けさせねば、⑥例の家とおぼしきところにものしたり。つとめて、なほもあらじと思ひて、
なげきつつひとり寝る夜のあくる間はいかに久しきものとかは知る
と、例よりはひきつくろひて書きて、⑧移ろひたる菊にさしたり。返り事、「あくるまでもこころみむとしつれど、とみなる召使の来あひたりつればなむ。いと理なりつるは。
げにやげに冬の夜ならぬ真木の戸もおそくあくるはわびしかりけり」
さても、いとあやしかりつるほどに事なしびたり。しばしは忍びたるさまに、「内に。」など言ひつつぞあるべきを、⑨いとどしう心づきなく思ふことぞ限りなきや

 

問一 次の語句の読みを、ひらがな(現代仮名遣い)で答えよ。
①文 ②十月 ③小路 ④理

問二 傍線部①について
(1)読みを、ひらがな(現代仮名遣い)で答えよ。
(2)季節は次のうちどれか。
ア 晩夏  イ 初秋  ウ 盛秋  エ 晩秋

問三 傍線部②の文法的意味を答えよ。

問四 傍線部③について、
(1)掛詞を指摘し、掛けられている意味を《例》にならって漢字で書け。
《例》初雁の鳴きこそ渡れ世の中の人の心のあきし憂ければ
《答え》あき 飽き・秋
(2)「橋」の縁語を三つ抜き出せ。
(3)この歌に込められた気持ちとして適切なものを次から二つ選べ。
ア 疑念  イ 憤り  ウ 不安  エ 悲哀

問五 傍線部④を現代語訳したものとして適切なものは次のうちどれか。
ア 上旬ごろ  イ 月末ごろ  ウ 過ぎ去ったころ  エ 半ばごろ

問六 傍線部⑤とあるが、どのようなことに対して「いみじう心憂し」と思ったのか。該当する部分を本文から二十字(句読点は字数に含まない)で探して、はじめと終わりの三字を書け。

問七 傍線部⑥は具体的にどこを指しているか。本文から十字で抜き出せ。

問八 傍線部⑦について、
(1)掛詞を指摘し、掛けられている意味を問四(1)の《例》にならって漢字で書け。
(2)「いかに久しきものとかは知る」の部分の解釈として、最も適切なものは次のうちどれか。
 あなたは長い時間をかけてお考えになってください。わたしも久しくあなたに会いたいという気持ちがおさえられなくなってしまいました。
 どんなに待ち遠しく長いものであるか、お分かりになるでしょうか。戸を開ける間さえ待ちきれないあなたでは、お分かりにならないでしょうね。
 わたしとの関係はどのようになってしまうのでしょうか。ひとりで寝ることが苦手ですから、これからもあなたの隣で寝たい気持ちは変わりません。
 これからわたしはどのように生きていけばいいのでしょうか。あなたがいない人生なんて少しも考えたことがなかったのに。

問九 傍線部⑧の表現を説明したものとして、最も適切なものは次のうちどれか。
ア 作者から兼家への好意がなくなったことを表している。
イ 作者から兼家への憤りがなくなったことを表している。
ウ 兼家の心が作者へと移ったことを表している。
エ 兼家の心がよその女に移ったことを表している。

問十 傍線部⑨に込められた気持ちとして、関係がないものは次のうちどれか。
ア 不快  イ 不当  ウ 失望  エ 不満

問十一 本文の出典と作者を漢字で答えよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【解答例】
問一 ①ふみ ②かんなづき ③こうじ ④ことわり
問二 (1)ながつき (2)エ
問三 最小限の希望(最小限の限定) ※類推は不可
問四(1)ふみ 文・踏み
※「うたがはし」に「橋」と「疑はし」が掛けられていることも一説として存在するが、ここでは明確な掛詞である「ふみ」のみを解答例としている。
(2)渡せ 踏み とだえ
(3)ア ウ
問五 イ
問六 町の小〜ひぬる
問七 町の小路なるそこそこ
問八(1)あくる 明くる・開くる (2)イ
問九 エ
問十 イ
問十一 蜻蛉日記、藤原道綱母

 

 

 

 

 

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