「能登殿の最期」「壇の浦の合戦」テスト問題〈1/3〉

【一】本文について、設問に答えよ。

およそ能登守教経の矢先に回る者こそなかりけれ。矢だねのあるほど射尽くして、今日を最後とや思はれけん、赤地の錦の直垂に、唐綾縅の鎧着て、いかものづくりの大太刀抜き、白柄の大長刀の鞘をはづし、左右に持つてなぎ回り給ふに、面を合はする者ぞなき。多くの者ども討たれにけり。①新中納言、使者を立てて、「能登殿、②いたう罪な作り給ひそ。さりとてよき敵か。」とのたまひければ、さては大将軍に組めごさんなれと③心得て、打物茎短に取つて、源氏の舟に乗り移り乗り移り、をめき叫んで攻め戦ふ。判官を見知り給はねば、④物の具のよき武者をば判官かと目をかけて、馳せ回る。判官も先に心得て、表に立つやうにはしけれども、とかく違ひて能登殿には組まれず。されどもいかがしたりけん、判官の舟に乗り当たつて、あはやと目をかけて飛んでかかるに、判官かなはじとや思はれけん、長刀脇にかい挟み、味方の舟の二丈ばかりのいたりけるに、ゆらりと飛び乗り給ひぬ。能登殿は早業や劣られたりけん、やがて続いても飛び給はず。⑤今はかうと思はれければ、太刀、長刀海へ投げ入れ、甲も脱いで捨てられけり。鎧の草摺かなぐり捨て、胴ばかり着て大童になり、大手を広げて立たれたり。およそあたりをはらつてぞ見えたりける。恐ろしなんどもおろかなり。能登殿大音声をあげて、「我と思はん者どもは、寄つて教経に組んで生け捕りにせよ。鎌倉へ下つて、頼朝にあうて、もの一言葉言はんと思ふぞ。寄れや寄れ。」とのたまへども、寄る者一人もなかりけり。

 

問一 次の語句の読みを、ひらがな(現代仮名遣い)で書け。
①直垂 ②唐綾縅 ③大音声

問二 傍線部①とは、誰のことか。姓名を漢字で答えよ。

問三 傍線部②を現代語訳せよ。

問四 傍線部③について、
(1)基本形(終止形)に直し、その読みをひらがなで書け。
(2)文法的説明として、最も適切なものは次のうちどれか。
ア ヤ行下一段活用動詞「心得」の未然形
イ ヤ行下二段活用動詞「心得」の連用形
ウ ア行下一段活用動詞「心得」の未然形
エ ア行下二段活用動詞「心得」の連用形

問五 傍線部④とは、何のことを指すか。本文から二つ抜き出せ。

問六 傍線部⑤とは、どういうことか。最も適切なものを選び、記号で答えよ。
ア 自らの死を覚悟したということ。
イ 相手と戦う覚悟を決めたということ。
ウ 自身の力のなさを自覚したということ。
エ 戦う必要がないと自覚したということ。

問七 傍線部⑥の現代語訳として、最も適切なものは次のうちどれか。
ア 恐ろしいという言葉を発するのは愚かである。
イ 恐怖で動けないというのは卑下しすぎている。
ウ 恐ろしいという言葉では言い尽くせない。
エ 恐怖を抱くのは自身が弱者の証拠である。

「能登殿の最期」「壇の浦の合戦」テスト問題 解答例

 

 

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