『伊勢物語』「筒井筒」テスト問題




【一】本文について、設問に答えよ。

昔、①田舎わたらひしける人の子ども、井のもとに出でて遊びけるを、大人になりにければ、男も女も恥ぢかはしてありけれど、男はこの女をこそ得めと思ふ。②女はこの男をと思ひつつ、親のあはすれども、聞かでなむありける。さて、この隣の男のもとより、かくなむ、
筒井筒井筒にかけしまろが丈過ぎにけらしな妹見ざるまに
女、返し、
くらべこし振り分け髪も肩過ぎぬ④君ならずしてたれか上ぐべき
など言ひ言ひて、⑤つひに本意のごとくあひにけり
さて、⑥年ごろ経るほどに、女、親なく、頼りなくなるままに、⑦もろともに言ふかひなくてあらむやはとて、河内の国高安の郡に、行き通ふ所出で来にけり。さりけれど、このもとの女、あしと思へるけしきもなくて、出だしやりければ、男、⑧異心ありてかかるにやあらむと、思ひ疑ひて、前栽の中に隠れゐて、河内へいぬる顔にて見れば、この女、いとよう化粧じて、⑨うちながめて
風吹けば沖つ白波たつた山夜半にや君がひとり越ゆらむ
とよみけるを聞きて、⑪限りなくかなしと思ひて、⑫河内へも行かずなりにけり
まれまれかの高安に来てみれば、⑬初めこそ心にくくもつくりけれ、今はうちとけて、手づからいひがひ取りて、笥子のうつはものに盛りけるを見て、心うがりて行かずなりにけり。さりければ、かの女、大和の方を見やりて、
君があたり見つつををらむ生駒山⑭雲な隠しそ雨は降るとも
と言ひて見出だすに、からうじて、大和人、「来む。」と言へり。喜びて待つに、たびたび過ぎぬれば、
君来むと言ひし夜ごとに過ぎぬれば頼まぬものの⑮恋ひつつ〈 ? 〉経る
と言ひけれど、⑯男住まずなりにけり

 

 

 

 

問一 次の語句の読みを、ひらがな(現代仮名遣い)で答えなさい。

①本意 ②郡 ③異心 ④前栽 ⑤笥子

問二 傍線部①とは、どのような人か答えなさい。

問三 傍線部②の部分の直後に省略されている表現を、本文から四字で抜き出せ。

問四 傍線部③の歌は男のどのような心理が詠まれたものか。最も適切なものを選び、記号で答えよ。
ア 催促  イ 和解
ウ 求婚  エ 断念

問五 傍線部④とあるが、女は結局のところ何が言いたかったのか。最も適切なものを選び、記号で答えよ。
ア 結婚などできるはずがありましょうか。いや、出来ません。
イ 私の相手となる人は、あなた以外にいるでしょうか。いや、いません。
ウ 私と結婚しても幸せになれるでしょうか。いや、なれません。
エ 結婚して身分が高くなるでしょうか。いや、なりません。

問六 傍線部⑤について、
(1)「本意」の具体的な内容にあたる部分を、本文から二十五字以内で探して、初めと終わりの五字ずつを書け。
(2)傍線部全体を現代語訳しなさい。

問七 傍線部⑥の語意を答えなさい。

問八 傍線部⑦を現代語訳しなさい。

問九 傍線部⑧について、
(1)「異心」とは、どのような心か。三字で答えよ。
(2)「かかる」は、何を指示しているか。本文から二十一字(句読点は字数に含まない)で探して、初めと終わりの三字ずつを書け。

問十 傍線部⑨を現代語訳しなさい。

問十一 傍線部⑩の歌について、
(1)序詞を抜き出せ。
(2)掛詞が用いられている。二つの意味を漢字で答えよ。
(3)「越ゆ」はどの語の縁語になっているか。本文から抜き出せ。

問十二 傍線部⑪を現代語訳しなさい。

問十三 傍線部⑫とあるが、それはなぜか。最も適切なものを選び、記号で答えよ。
ア 男は山を越えて高安の女のもとに行くのが怖くなったから。
イ 男はもとの女と高安の女を容貌を比べて、優劣つけたから。
ウ 男はもとの女の純粋な感情がいとしく思ったから。
エ 男は高安の女が下品な人間だと判断できたから。

問十四 傍線部⑬を現代語訳したものとして、最も適切なものを選び、記号で答えよ。
ア はじめは高安の女を愛しく思っていたが、
イ はじめは奥ゆかしく装っていたが、
ウ はじめは憎たらしいと思っていたが、
エ はじめは下品な女を装っていたが、

問十五 傍線部⑭を現代語訳しなさい。

問十六 傍線部⑮について、〈 ? 〉に入るべき助詞として、最も適切なものを選び、記号で答えよ。
ア か  イ は  ウ こそ  エ ぞ

問十七 傍線部⑯とあるが、男の心理として、最も適切なものを選び、記号で答えよ。
ア 幻滅  イ 体面
ウ 強情  エ 不安

問十八 出典と文学ジャンルを答えなさい。

 

 




 

 

 

 

 

【解答例】

問一 ①ほい ②こおり ③ことごころ ④せんざい ⑤けこ

問二 田舎で生活をしていた人

問三 こそ得め

問四 ウ

問五 イ

問六(1)男はこの女〜と思ひつつ

(2)とうとう本来の目的どおり結婚した。

問七 数年

問八 お互いにみじめな状態でいられようか。いや、いられない。

問九(1)浮気心

(2)あしと〜ければ

問十 もの思いにふけりながらぼんやり眺めて

問十一(1)風吹けば沖つ白波

(2)・白波が立つ ・田山

(3)波

問十二 この上なくいとしい

問十三 ウ

問十四 イ

問十五 雲よ隠さないでおくれ

問十六 エ

問十七 ア

問十八 伊勢物語、歌物語

 

 

 

 

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