【一】本文について、設問に答えよ。
昔、男、片田舎に住みけり。男、「宮仕へしに。」とて、別れ惜しみて行きけるままに、【 X 】年来ざりければ、待ちわびたりけるに、いとねんごろに言ひける人に、「今宵あはむ。」と契りたりけるに、この男来たりけり。①「この戸開け給へ。」とたたきけれど、開けで、歌をなむよみて出だしたりける。
あらたまの年の【 X 】年を待ちわびてただ今宵【 Y 】新枕すれ
と言ひ出だしたりければ、
②あづさ弓ま弓槻弓年を経てわがせしがごとうるはしみせよ
と言ひて、いなむとしければ、女、
あづさ弓引けど引かねど昔より心は君に寄りにしものを
と言ひけれど、男帰りにけり。女、いと悲しくて、しりに立ちて追ひ行けど、③え追ひつかで、清水のある所に伏しにけり。そこなりける岩に、指の血して書きつけける。
④相思はで離れぬる人をとどめかねわが身は今ぞ消え果てぬめる
と書きて、そこに⑤いたづらになりにけり。
問一 次の語句の本文中での読みを、ひらがな(現代仮名遣い)で答えよ。
①指 ②離(れぬる)
問二 【X】【Y】について
(1)【X】に入るべき漢数字として、最も適切なものを選び、記号で答えよ。
ア 二 イ 三 ウ 五 エ 六
(2)【Y】に入るべき助詞を書け。
問三 傍線部①とあるが、なぜ「開け」なかったのか。その理由に該当する部分を二十九字(句読点を字数に含む)で探して、はじめと終わりの五字ずつを書け。
問四 傍線部②の歌について
(1)誰が誰に詠んだ歌か。選択肢から選び、記号で答えよ。
ア 男 イ 女 ウ いとねんごろに言ひける人
(2)序詞を抜き出せ。
(3)この歌には詠み手のどのような気持ちが込められているか。最も適切なものを選び、記号で答えよ。
ア 自分を長年愛してくれたように、愛してあげてください。
イ 自分を長年待っていてくれたように、寛容でいてください。
ウ 自分と生活していたように、幸せな日々を送ってください。
エ 自分との生活は終わりますが、これからも見守ってください。
問五 傍線部③を現代語訳しなさい。
問六 傍線部④の歌について
(1)この歌に読み込まれている心情が端的に表現されている箇所を、本文から五字で抜き出せ。
(2)係助詞とその結びを抜き出しなさい。
問七 傍線部⑤の現代語訳として、最も適切なものを選び、記号で答えなさい。
ア 無駄になってしまった。
イ いたずらをしてしまった。
ウ 転んでしまった。
エ 死んでしまった。
問八 出典について
(1)出典を答えなさい。
(2)本文に登場する「男」は、この出典の主人公である。その姓名を漢字で書け。
【解答例】
問一 ①および ②か(れぬる)
問二(1)イ(2)こそ
問三 いとねんご~りたりける
問四(1)アがイに(2)あづさ弓ま弓槻弓年(3)ア
問五 追いつくことができないで
問六(1)いと悲しく(2)ぞ、める
問七 エ
問八(1)伊勢物語(2)在原業平
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2020.6.19にサイト「ことのは」を開設、高校国語(現代文、古文、漢文)のテスト問題やプリントを作成、まれに中学国語の教材も扱っています。リクエストがあればコメントかTwitterのDMまで!!