『山月記』テスト問題〈第一段落〉

【一】本文について、設問に答えよ。

隴西の李徴は博学才穎、①天宝の末年、若くして名を虎榜に連ね、ついで江南尉に補せられたが、性、②狷介、自ら恃むところすこぶる厚く、③賤吏に甘んずるを潔しとしなかった。いくばくもなく官を退いた後は、故山、虢略に帰臥し、人と交わりを絶って、ひたすら詩作にふけった。下吏となって長く膝を俗悪な大官の前に屈するよりは、詩家としての名を死後百年に遺そうとしたのである。しかし、文名は容易に揚がらず、生活は日を追うて苦しくなる。李徴はようやくA焦燥にかられてきた。このころからその容貌も峭刻となり、肉落ち骨秀で、眼光のみいたずらに炯々として、かつて進士に登第したころの豊皀の美少年のおもかげは、いずこに求めようもない。数年の後、BヒンキュウにC堪えず、妻子の衣食のためについに④節を屈して、再び東へ赴き、一地方官吏の職を奉ずることになった。一方、これは、己の詩業に半ば絶望したためでもある。かつての同輩はすでにはるか高位に進み、彼が昔、鈍物として歯牙にもかけなかったその連中の下命を拝さねばならぬことが、往年の儁才李徴の自尊心をいかに傷つけたかは、想像に難くない。彼は怏々として楽しまず、狂悖の性はいよいよ抑え難くなった。一年の後、公用で旅に出、汝水のほとりに宿ったとき、⑤ついに発狂した。ある夜半、急に顔色を変えて寝床から起き上がると、何かわけのわからぬことを叫びつつそのまま下に飛び下りて、闇の中へ駆け出した。彼は二度と戻ってこなかった。付近の山野をDソウサクしても、何の手がかりもない。その後李徴がどうなったかを知る者は、誰もなかった。

 

問一 傍線部A〜Dのカタカナは漢字に直し、漢字は読みをひらがなで答えよ。

問二 傍線部①とあるが、当時中国を支配していた王朝名を漢字で答えよ。

問三 傍線部②の意味として、最も適切なものは次のうちどれか。
ア 頑固で人と協調しないようす
イ 傲慢で人を見下すようす
ウ 打算的で自分勝手なようす
エ 短気で怒りっぽいようす

問四 傍線部③とあるが、「賤吏」と同意の語を本文から二字で抜き出せ。

問五 傍線部④とあるが、具体的にどのような「節を屈し」たのか。次の空欄に入る語句を本文から十六字で抜き出せ。
◆( 本文から十六字 )という節を屈した。

問六 傍線部⑤とあるが、この事態になるまでにたどった気持ちに含まれないものは次のうちどれか。
ア 不満  イ 焦燥  ウ 絶望  エ 恐怖

問七 本文の作品名と作者を漢字で答えよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【解答例】
問一 Aしょうそう B貧窮 Cこた(えず) D捜索
問二 唐
問三 ア
問四 下吏
問五 詩家としての名を死後百年に遺そう
問六 エ
問七 山月記、中島敦

 

 

 

 

 

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