「若紫」テスト問題〈3/3〉

 

【三】本文について、設問に答えよ。

尼君、髪をかき撫でつつ、「梳ることをうるさがり給へど、①をかしの御髪や。いとはかなうものし給ふ《 X 》、あはれに後ろめたけれ。かばかりになれば、いとかからぬ人もあるものを。故姫君は、十ばかりにて殿におくれ給ひしほど、いみじうものは思ひ知り給へりしぞかし。ただ今おのれ見捨て奉らば、②いかで世におはせむとすらむ。」とて、いみじく泣くを見給ふも、すずろに悲し。幼心地にも、さすがにうちまもりて、伏し目になりてうつぶしたるに、こぼれかかりたる髪、つやつやとめでたう見ゆ。
生ひ立たむありかも知らぬ若草をおくらす露ぞ消えむそらなき
またゐたる大人、「げに。」とうち泣きて、
初草の生ひゆく末も知らぬまにいかでか露の消えむとすらむ
と聞こゆるほどに、僧都あなたより来て、「こなたはあらはにや侍らむ。今日しも端におはしましけるかな。この上の聖の方に、源氏の中将の、瘧病まじなひにものし給ひけるを、ただ今《 Y 》聞きつけ侍る。いみじう忍び給ひければ、知り侍らで、ここに侍りながら、御訪ひにもまうでざりける。」とのたまへば、「あないみじや。いとあやしきさまを人や見つらむ。」とて、簾下ろしつ。「⑤この世にののしり給ふ光源氏、かかるついでに見奉り給はむや。⑥世を捨てたる法師の心地にも、いみじう世の憂へ忘れ、齢延ぶる人の御ありさまなり。いで御消息聞こえむ。」とて立つ音すれば、帰り給ひぬ。
あはれなる人を見つるかな、かかれば、このすき者どもはかかる歩きをのみして、よくさる⑦まじき人をも見つくるなりけり、たまさかに立ち出づる⑧だに、かく思ひのほかなることを見るよ、とをかしう思す。さても、いとうつくしかりつる児かな、何人ならむ、かの人の御代はりに、⑨明け暮れの慰めにも見ばや、と思ふ心深うつきぬ。

 

問一 次の語句の読みを、ひらがな(現代仮名遣い)で答えよ。
①聖 ②消息

問二 傍線部①の現代語訳として、適切なものは次のうちどれか。
ア おかしい髪ですね。
イ きれいな髪ですこと。
ウ ひどい髪なのですね。
エ 評判の良い髪ですこと。

問三 《 X 》《 Y 》に入るべき助詞をひらがな二字で書け。

問四 傍線部②の現代語訳として、適切なものは次のうちどれか。
ア どうしてこの世に生きていようとするのでしょうか。
イ どうやってこの世で生きていけば良いのでしょう。
ウ どうしてこの世にいようとしているのでしょうか。
エ どうやってこの世に生きておられようとするのでしょう。

問五 傍線部③の歌について、
(1)「露」の縁語を抜き出せ。
(2)「露」は誰をたとえているか。本文から人物を抜き出せ。

問六 傍線部④の歌について、
(1)「初草」に喩えられている人物は出典のこの帖の名前に相当する。その名称として、適切なものは次のうちどれか。
ア 夕顔 イ 若紫 ウ 匂宮 エ 朝顔
(2)(1)で答えた帖は、出典の第何帖か、例に従って答えよ。
《例》桐壺 → 《答え》第一帖

問七 傍線部⑤を現代語訳せよ。

問八 傍線部⑥とあるが、何をした人のことか。漢字二字で書け。

問九 傍線部⑦・⑧の文法的説明の組み合わせとして、最も適切なものは次のうちどれか。
ア ⑦打消当然の助動詞 ⑧類推の副助詞
イ ⑦打消当然の助動詞 ⑧最小限の限定の副助詞
ウ ⑦打消意志の助動詞 ⑧類推の副助詞
エ ⑦打消意志の助動詞 ⑧最小限の限定の副助詞

問十 傍線部⑨とあるが、この部分に表れた心理として、適切なものは次のうちどれか。
ア 興味 イ 幻滅 ウ 当惑 エ 哀愁

問十一 本文の出典と作者を漢字で答えよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

【解答例】
問一 ①ひじり ②しょうそこ
問二 イ
問三 《X》こそ 《Y》なむ
問四 エ
問五(1)若草・消え
(2)尼君
問六(1)イ
(2)第五帖
問七 世間で評判が高くいらっしゃる光源氏
問八 出家
問九 ア
問十 ア
問十一 源氏物語、紫式部

 

 

 

 

 

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